日本財団 図書館


 

の隙や□六〇号室の列の妻壁の鉄板の隙間内から吹き出し、燃え始めていたようだ。(ビデオがベランダ側の映像しかないので階段ホール側の裏側の現象は、住民のヒアリング調査等が必要である。かなり早くから煙が吹き出していたようだが、燃え出したタイミングは不明である。)
どうしてこのようなことになったかと言えば、本来防火区画とならなければならない床や壁面のいたるところに隙間があり、アスベストの埋めもどしも完全でなく、煙にとっては、設備系のパイプシャフトの穴埋め不十分な場所と同様、容易に煙道となってしまっている。
出火室の九六五号室で窓ガラスが破れるとか入口の扉が開いたままになるようなことになって空気が十分に供給されフラッシュオーバーの現象が起こった後の燃焼は急激で、数分間で煙は最上階から完全に充満しながら、だんだん下の階に充満が進み、窓ガラスが破れるなどして空気が供給され、何かの火源があれば、いつでも燃え上がる可能性を持っていた。その上ベランダのアクリル板が激しく燃えることによって上階に大量のススを含んだ黒煙が立ち上がり、窓ガラスを破りながら耐火高層アパートとしては信じられない速さで燃え上がって行ったと考えて良い。
ビデオを見ると最上階まで炎に包まれているのは、二時五〇分過ぎであるが、実際はもっと早い段階で上階に火災が拡がった可能性がある。消防は廊下に設けられた消火栓で消火活動を試みているが、それぞれの階の消火栓を同時に出せるような設計にはなっていないわけで、水圧が得られず消火に手間どったが、消火活動の時間経過の調査をやれば、ベランダ側のビデオの解析だけでは分らない火災の拡大過程が分る筈である。
ビデオの映像を見ると、九階のベランダのアクリル板が激しく燃えて一〇階のベランダにあったポンペ状のものが爆発した(二時四六分頃)後、急速にベランダのアクリル仮を伝って上階に延焼して行ったように見えるが、室内に不完全燃焼で生成された圧力と熱を持った可燃性のガスが充満していなければ、あれだけ急速な上階への延焼は考えられない。不確かな情報であるが、ベランダから上階に燃え上がるより前に、上階の室内で赤い炎が見えたという証言もあり、確認する必要がある。
出火室の二階上の一一六五号室は、ベランダに物を置かないよう注意していたことや、避難の際、サッシュをきちっと締めて逃げたため、窓ガラスが破れなかったことで焼失をまぬがれている。しかし買ったばかりの冷蔵庫が熱で少し変形していたり、天井のプラスチック製の照明器具が溶けているのを見ると室内には相当高熱の煙が充満していたことがうかがえる。さらに考えられることは、このような建物火災では、煙は上階から下へと充満するために最も煙の汚染が遅れたのが一一六五号室かも知れない。
これまでの建物火災の一般的常識では、火災階に近い階が危険性が高いように考えられているが、火災の直上階よりも建物の最上階の方が早く危険になっており、煙の濃度は最上階が一番濃くなっており煙によって死ぬ確

008-1.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION